その賃料、適正ですか?賃料の増減額請求について

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親の代から貸している物件の賃料額が変わっていない、以前に決めた賃料が相場に比べて安くなっている、といったお悩みはありませんか。

賃料は、一度決めたとしても、その後の経済事情などに応じて、不相当に高い、若しくは低いといえる場合には、賃料の額を増額する、若しくは減額するよう相手方に請求することが可能です。

増額や減額の幅が小さい場合には、それほど大きな影響は無いようにも思えますが、これがテナント1棟となった場合には、全部ひっくるめるとかなりの金額になります。

例えば、賃料について1室あたり月額5000円の増額が可能な場合、テナント10室として月額5万円、年間で60万円、向こう5年で300万円もの差が付くことになります。

賃料が不相当に高い(低い)はどのように決まるのか

それでは、賃料が不相当に高い(低い)といえるかは、具体的にどのように決まるのでしょうか。

この点、東京都の直近の家賃相場の推移を見ると、一旦は東日本大震災を契機に下がったものの、その後、現在(注:令和5年11月現在)に至るまで上昇の一歩を辿っており、全体として賃料相場は上昇傾向にあると思われます。

そうすると、東京都では、賃貸物件の大半について、賃料の増額が認められてしまうのでしょうか。

実際にはそれほど単純な話ではなく、もう少し詳しく検討する必要があります。

まず、どのような場合に賃料の増減額が可能かを定めた法律を確認してみましょう。

借地借家法第32条は、建物の賃貸借における借賃増減請求権について、次のように定めています。

建物の借賃が、土地若しくは建物に対する租税その他の負担の増減により、土地若しくは建物の価格の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により、又は近傍同種の建物の借賃に比較して不相当となったときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かって建物の借賃の額の増減を請求することができる。

ちょっと長くて良くわからないですね。少し噛み砕くと、

建物の家賃は、

① 経済事情の変動、すなわち、

  土地や建物の税金の変動

  土地や建物の価格の変動

  その他の経済事情の変動 や

➁ 近隣の同じような建物の賃料相場の変動

により、不相当となった場合には、増額や減額の請求をすることができます。

実際は、①②だけではなく、その他の事情も考慮されます。

そして、不相当かどうかは、現在の相当な賃料を算出し、従前の賃料と比較して判断することになります。

相当な賃料とは

それでは、現在の相当な賃料は、どのようにして算出するのでしょうか。

一般的には、貸主・借主が、現在の家賃で貸します・借ります、という合意(「直近合意」といいます。)が成立した時点から、賃料の増額・減額を請求した時点までの間に、どのような事情の変化があったのか、また賃貸借契約を締結した経緯なども考慮して算出します。

実際には、算出の作業は当事者が各々不動産鑑定士さんにお願いする、若しくは裁判所が当事者の申出を受けて不動産鑑定士さんに鑑定をお願いすることになります。

もっとも、不動産鑑定士さんが算出する現在の相当な賃料には、賃貸借契約を締結した経緯など考慮されていない場合もあるため、注意が必要です。

それでは、賃料の増減額をどうやって請求していくのか、手続を確認してみましょう。

手続は、一般的には、以下の3段階になります。

① 任意交渉

② 調停

③ 訴訟

①任意交渉の段階では、鑑定まで行わず、不動産屋さんの簡易査定などを踏まえて、増減額を請求することが比較的多いかと思います。この段階で話し合いが進み、解決に至ることも良くあります。

しかし、相手方が任意交渉に全く応じない、話し合いが平行線を辿る、といった場合には、裁判所に②調停を申し立てることになります。調停とは、裁判官・調停委員(弁護士や不動産鑑定士)で構成された調停委員会が、当事者の間に入り、話し合いで解決することを目的とする手続です。

法的手続(調停・訴訟)

この点、調停を飛ばして直接訴訟を起こせば良いのではないか、とのご意見もあるところですが、賃料増減額請求については、法律上、調停前置、すなわち先に調停を申し立てないと訴訟を起こせない建付けになっているため、基本的には、まず調停を申し立てます。

調停では、双方から提出された資料を踏まえて調停委員会が試案を出し、双方が合意すれば調停成立となります。

一方、当事者が試案に納得しない場合には、調停は不調(話し合いが成立しなかった)となるか、それとも調停委員会が調停に変わる決定(双方に異議が無ければ調停成立、双方のいずれかが異議申立をすれば決定は効力を持たない)がされることになります。不調・異議申立の場合には、いよいよ訴訟を提起することになります。

訴訟では、当事者双方が鑑定を行う(私的鑑定)ことが多く、決着が付かない場合には、裁判所が当事者の申出により裁判所が選定した不動産鑑定士に鑑定を依頼する(法的鑑定)流れとなります。法的鑑定まで行われた場合、同鑑定に基づいて和解、若しくは判決がされることが一般的です。

かなりざっくりと、賃料増減額請求の内容や流れについてご説明しました。

当初のイメージより難しい、分かり難い、との印象を持たれた方が多かったのではないでしょうか。

賃料増減額請求は、中身を詳細に分析すると非常に複雑であり、専門家に任せて然るべき分野とも言えるかと思います。弊所には提携している不動産鑑定士もおりますので、まずは請求ができる状況なのか否か確認するため、一度、お気軽にご相談頂けますと幸いです。

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