債権回収における財産調査の方法 財産開示手続とは?

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いざ判決を得ても、返してもらえない、財産がない、債権回収では良くある話です。

ですので、債権回収事案では、まず回収できる見込みがあるか、が重要です。

債務者が無職・住所不定のような状況にあると、回収の見込みは一気に下がります。無いところからお金は取れないためです。

もっとも、口ではないないと言っておきながら、どうやらそのようなことは無いらしい、といったケースも良く見受けられます。

しかし、債務者の財産を探す手がかりもありません、何か打てる手立てはあるのでしょうか。

そのような場合、用いられるのが財産開示手続です。

財産開示手続とは、一定のペナルティのもと、債務者に対し、保有する財産の詳細を期日でつまびらかにするよう要求できる手続です。

この財産開示手続、以前はあまり用いられていませんでした。

というのも、債務者が財産開示手続を無視しても、30万円以下の過料が課されるというペナルティしか無かったためです。ちなみに、過料が課された場合、国が一般の債権者に優先して徴収できるようになりますので、債権者の回収の可能性は更に減ることになります。

しかし、民事執行法の改正により、債務者が財産開示手続に違反した場合のペナルティが強化されました。

具体的には、債務者が正当な理由なく財産開示期日に出頭しない、期日での宣誓を拒否する、期日で陳述しない、期日で虚偽の陳述をした場合には、債務者には、6月以下の懲役又は50万円以下の罰金が課されます。

刑罰である以上、違反によって逮捕・勾留される可能性がありますし、前科も付きますので、債務者が受けるデメリットは非常に大きくなったと言えるでしょう。

なお、罰金刑の場合は、過料と異なり、支払わなければ労役場留置といって、一定期間労役場で強制的に労働を課される可能性があります。

財産開示手続の申立てをするためには

さて、肝心の財産開示の手続ですが、申し立てるためには、

① 執行力のある債務名義の正本を有する金銭債権の債権者

  若しくは

② 一般の先取特権を有する債権者

である必要があります。

①ですが、もう少しかみ砕いて説明すると、判決や裁判における和解、また公正証書のうち強制執行が可能となっているもの、を得ていることが必要です。

公正証書ではない和解契約書や覚書などで債務者が債務を認めていたとしても、それだけでは財産開示の手続を採ることはできません。

また、

❶ 直近で強制執行等を試みたが空振りに終わった、全額回収できなかったこと

若しくは

❷ 債権者が把握している財産に強制執行しても空振りに終わることが明らか

であることも必要です。

要するに、回収できる見込みが高い債務者の財産に対しては、事前に強制執行しておきなさい、との制度になっています。

裁判所に予納する費用について

財産開示手続の申立費用として、東京地方裁判所の場合(債権者1名、債務者1名)、

  • 印紙:2,000円
  • 郵券:6,000円

合計8,000円が必要となります。

申立後の流れについて

その他必要書類を整え、申立てを行ったのちは、以下のような流れとなります。

まず、裁判所が必要書類を確認し、問題が無ければ財産開示手続の開始決定を下します。

そして、決定日から1か月後くらいを目安に、財産開示期日を指定します。

また、債務者に対し、財産開示期日の10日前を目安として、財産目録を提出するよう要請します。

財産目録は、給与・俸給・役員報酬・退職金、預金・貯金・現金、生命保険・損害保険、売掛金・請負代金・貸付金、不動産所有権・不動産賃借権、自動車・電話加入権・ゴルフクラブ会員権、株式・債券・出資持分・手形小切手・主要動産、その他の動産の項目に分かれており、各別について、債務者が回答する内容になっています。

債務者の財産目録の提出を踏まえて期日が開催されますが、東京では、債権者に対し、事前に期日で債務者に質問する事項を裁判所に送るよう求めています。

期日当日は、裁判官が、最初に、債権者が事前に送った質問を踏まえて債務者に質問し、その後で債権者が質問をする、という流れが多い印象です。

期日でのやり取りは調書化され、後で確認することができますので、調書の内容を基に強制執行を掛けられるか検討することになります。

第三者からの情報取得手続

財産開示手続が終了した後ですが、債権者は、債務者の財産に関する情報を公的機関や金融機関に照会することができるようになります。財産開示手続の実効性を高めるためです。

具体的には、

  1. 不動産
  2. 給与(勤務先)
  3. 預貯金
  4. 振替社債等

という4つのカテゴリーで、情報の照会が可能となります。

1.不動産

「1 不動産」は、全国の登記所に債務者の名義の不動産があるか、ある場合は特定するに足りる情報の照会を求めることができます。

2.給与(勤務先)

「2 給与(勤務先)」は、市町村若しくは厚生年金の実施機関等に、債務者に給与を支払う者がいるか、いる場合は特定するに足りる情報の照会を求めることができます。

ただし、給与(勤務先)の照会については、養育費等の請求など、債権の種類が限られることから、貸金や出資金のような請求については基本的に利用することができません。

3.預貯金

「3 預貯金」は、金融機関に、債務者の名義の預貯金債権があるか、ある場合には執行するに足りる情報の照会を求めることができます。弁護士会照会によっても同様の照会が可能ですが、若干の違いがあります。なお、「3 預貯金」の情報取得手続については、財産開示手続を経ずとも申立てが可能です。

4.振替社債

「4 振替社債」は、対象となる振替機関若しくは口座管理機関から、債務者の名義の振替社債等があるか、ある場合には執行するに足りる情報、すなわち振替社債等の銘柄、額または数の照会を求めることができます。「4 振替社債」の情報取得手続についても、財産開示手続を経ずとも申立てが可能です。

情報取得手続を申し立てるに当たり注意しなくてはならないのは、債権者が第三者からの情報取得手続を申立て、第三者が情報提供したことが、最終的に債務者に通知されることです。

一応、強制執行をするための時間が経過したのちに通知がされる運用となっていますが、債権者側で、情報の開示を受けて、即強制執行に踏み切る必要があることや、債務者への通知がされることで債務者の警戒が強まり、財産隠しを試みる可能性があることは認識しておいた方が良いでしょう。

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