店子に未払いの賃料があるので、精算してもらいたい、建物を出て行ってほしい そのような場合、まずは何をすべきか?

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私は現在、とあるマンションのオーナーとして、各部屋を賃貸しております。

前々から家賃の支払いが滞ることが多い店子がおりまして、管理会社が催促するとその都度払ってくれはするのですが、最近になってもう4か月ほど不払いが続いております。

家賃保証会社は入れていません。賃貸借契約書を確認したところ、2か月の賃料未払いがあれば即契約を解除することができる旨記載してあるので、契約を解除して退去をお願いしたいのですが、具体的にどのような流れで進めるのが良いのでしょうか。

※  普通建物賃貸借であることを前提としております。

回答:弁護士 松山

まずは、当初に取り交わした賃貸借契約書(契約の解除条項)を確認してみましょう。

契約の解除条項には、家賃の滞納がある程度の期間継続した場合には賃貸借契約を解除できる、と定めているのが一般的です。期間は、「1ヶ月」や「2ヶ月」としているものが多いのではないでしょうか。

そこで、まず、家賃の滞納が、契約条項に定めた契約解除の条件を満たすかどうか、確認する必要があります。契約書によって、上記のとおり家賃滞納の期間を何か月と設定しているのか、家賃の滞納があった場合、催告(催促)したうえでなお支払いが無ければ解除、としているのか、それとも催告を不要としているのか、建付けが異なりますので、きちんと文言を確認しなければなりません。

しかし、形式的に契約解除の条件を満たし、契約を解除する旨の通知を送ったとしても、実際に解除が認められるかどうかは、別途検討する必要があります。

なぜ、契約解除の条件を満たしても、解除できない場合があるのでしょうか。

それは、賃貸借契約が、賃借人の生活の基盤となっていることから、実務上、賃貸人と賃借人との間の信頼関係が破壊されたといえるレベルの違反行為がないと、解除を認めない運用となっているためです。

それでは、何か月分の家賃の滞納があれば、契約の解除が認められるのでしょうか。

一般的には、3か月程度の未払いがあれば契約の解除が可能と言われております。

しかし、これも具体的な事実関係によって結論が異なってくる可能性があり、より短い期間で認められる場合もあれば、3か月の未払いで認められない場合もあり得るところです。

また、賃借人が契約を解除されても住み続けた場合のペナルティ条項も、地味に重要です。

一般的には、賃料の2倍や3倍の賃料相当損害金を支払ってもらう、との内容になっておりますが、これは、ペナルティを課さないと、賃料と同額の損害金を支払って住み続けることが可能になってしまうためです。

たまに、このペナルティ条項が入っていない賃貸借契約書を見掛けることがありますが、いざ契約を解除した場合、同条項の有無によって、賃借人における退去に対するモチベーションが大きく変わるため、なるべく事前に同条項が入っているか、確認した方が良いでしょう。

さて、今回の事案では、4か月ほどの賃料未払いがあるとのことで、解除そのものは可能のようです。

それでは、契約の解除が可能として、どのように進めるべきでしょうか。

まず、契約条項に基づき、契約を解除する旨、借主に通知する必要があります。

契約を解除する旨の書面は、借主に後で解除の日付を争われないよう、内容証明で送付するのが良いでしょう。

この点、よくあるのが、借主において内容証明を受け取らないケースですが、受け取らない場合に備えて特定記録等で内容証明と同一の文書を郵送する、といった方法を採ります。

契約を解除する旨の通知が借主に届いた後は、相手方との間で、まずは任意で退去してもらうよう話し合いを設けることになりますが、長々と交渉する必要はなく、場合によっては、後述する訴訟の提起と並行して行うことになります。

借主が任意に出ていかない場合には、相手方に対し、建物明渡訴訟を提起することになります。訴訟といっても、必ずしも全てのケースで判決に至るわけではなく、相手方が期日に出頭し、退去の条件について合意のうえ和解することもあります。

もっとも、ここでも、相手方の引き延ばしを避けるため、裁判に遅れが生じないよう、最短で勝訴判決を得ることを目指します。

勝訴判決を得たとしても、そのまま相手方が退去するわけではないので、まずは相手方に対し、判決を得たので退去するよう通知します。

なお相手方が退去しない場合は、勝訴判決に基づいて、強制執行の申立てを行うことになります。

強制執行は、相手方を強制的に退去させる手続ですが、併せて、相手方が建物内に残した動産類も移動・処分します。この動産類の移動・処分には、多額の費用が掛かる可能性があることに注意が必要です。建物がいわゆるゴミ屋敷のような状態の場合には、強制執行のため100万円以上の費用が掛かるケースもあります。

建物の明渡請求は、比較的簡単な事案と思われがちですが、具体的な事実関係を踏まえ、そもそも契約の解除が認められるのか、認められるとしても強制執行までする必要はあるのか、その手前で退去してもらうにはどのような交渉を行えば良いのか、など、専門家のバックアップがあることが望ましいでしょう。

弊所では、建物明渡に関する交渉や裁判を多く取り扱ってきました。賃貸物件も、商業ビル、マンションから一軒家まで幅広く対応しております。建物明渡に関しお悩みのオーナー様は、まずは見通し等、弊所にてご確認を頂けますと幸いです。

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