揉め事が起こった際に良く聞くのが、覚書を交わしましょう、という話、でも、覚書ってそもそも何でしょうか?
覚書とは、ようするに当事者間の取り決めです。
よくあるご質問
A 本当ではありません。
覚書と契約書はタイトルの違いに過ぎず、肝心なのは内容です。
法的効果が生じる内容になっていれば、覚書でも契約書でも、はたまた念書でも効力を持ちますし、法的効果が生じる内容になっていなければ、どのようなタイトルにしようと効力は生じません。
ここで簡単な例を挙げてみましょう。
BさんがAさんに対し、お店の経営が苦しいのでお金を融通してほしいと要望し、AさんがBさんにお金を貸したところ、Bさんの返済が滞りました
そこで、AさんがBさんに対し、何らかの書面を書くよう要望したところ、
Bさんは、
①「 ○年〇月〇日までに、借りたお金100万円を返します 」
②「 お店の件でご迷惑をお掛けして申し訳ありません 」
との書面を書いて寄こしました。
①であれば、タイトルは何であろうと、Bさんが期限までに返済しなければならないとの縛りが生じます。
しかし、②のみでは、タイトルを何にしようと、Aさん、Bさんのお金の貸し借りの件について直接の縛りを生じさせることはできません。タイトルを「返済契約書」としても、貸金や返済期限が特定されないため、②の書面をもって縛りを生じさせるのは厳しいでしょう。
以上のとおり、タイトルのみで効力の有無が決まることは、タイトルに具体的な内容が盛り込まれているなど、よほど例外的な場合ではない限りはありません。
更に、覚書に関してよくある質問を見てみましょう。
A 必ずしも支払う必要はありません。
あまりにも高額な慰謝料を支払う旨約束した場合、そもそも支払えない、支払う意思がないことが推測され、請求する側もその事実を知り得たと思われます。
そのような場合、心裡留保といって、覚書で定めた内容が無効となる可能性が高いものといえます。
また、高額であることが、公序良俗、いわゆる公の秩序・善良な風俗に反すると認定される可能性もあります。
この話は、浮気に対するペナルティに限りません。例えば、外注先にミスのペナルティを科す場合にも当てはまるでしょう。
覚書を作成する際には、あまりに高額なペナルティを科す内容となっていないか、検討する必要があります。
A 内容によっては、支払いをしなくてもよいかもしれません
まず、保証金額が明らかではない場合です。
例えば、とある契約に関し発生する全ての債務、といった抽象的な内容の場合です。
そのような債務の保証は、根保証契約といって、極度額、いわゆる上限額を定めないと無効となります。
また、債務者の事業融資などを保証する場合、保証人が事業と無関係だと、公証人による意思確認が必要となります。安易に保証を認めてしまうことで、保証人に過度な負担を負わせないようにしているのです。
公証人による意思確認がされた後は、続いて、公証人により公正証書が作成されます。
要するに、保証人が事業と無関係だと、覚書を公正証書にする必要があるのです。
反面、覚書を公正証書にしていないと、保証契約は無効となり、保証人は支払いを免れることになります。
A 覚書の内容いかんによります。
覚書などで相手方への支払義務を定める場合、重要なのは、その支払義務以外に支払いを負う余地を残すか否か、です。
この余地を残すか否か、を決めるのは、いわゆる清算条項です。清算条項とは、
「甲及び乙は、甲と乙との間には、本覚書に定めるほか一切の債権債務が無いことを相互に確認する。」
といった文言の条項です。覚書にこの条項を繰り入れることで、相手方は、覚書が定める支払いを超えて請求ができなくなります。
注意しなければいけない点として、「本件に関し」という限定を付すかどうか、検討する必要があります。「本件に関し」と限定を付すと、問題になっている案件に関し、清算条項が適用され、同案件以外の部分には適用が及びません。
一方、相手方と問題になっている案件以外に取引がある、貸借がある、といった場合には、「本件に関し」と限定を付さないと、当該取引や貸借もチャラになる、との事態を招き兼ねません。清算条項を設ける際には、必ず検討しましょう。